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【第3話 ヴァルナ、社会の分割/カースト制度とは】
- 人格による分割
- 仕事による分割
- 生まれによる分割と選択
社会は「3つの基準」に基づき、「4つに分割」されている
今回は、非常に重要なテーマである、「社会の分割・組織体系/ヴァルナ制」についてお話したいと思います。これはなかなか翻訳するのが難しい言葉で、カースト制度(階級・身分制度)と誤解されていることも多くあります。
聖典の最も重要な目的は、人間が4つの人生の目的を成就するのを助けるためです。そして聖典は、人間が4つの人生の目的を成就するための「インフラ」を提供しています。今日、世界のインフラは広範囲に及び、私たちにとって非常に重要なものとなっています。もし交通のための道路がなかったら、電話やインターネット、E-メールなどの伝達手段がなかったなら、その国には必要なインフラがない、ということになってしまいます。
聖典によるとこのインフラは、社会と人間が、4つの人生の目的すべてを達成するのに、理想的なインフラである、と言います。ですが聖典は、これを物質的な目的のためだけに提供している訳ではありません。このインフラは、「霊的なことと物質的なことの、“両方”の目的のため」に作られた、ということを覚えておかねばなりません。
西洋社会では、物質的な成功のみを目的としたインフラの提供に特化されています。お金を稼ぐことと、娯楽を提供すること“のみ”にです。聖典は、「“ただの”物質的な成功だけでは、まったく価値がない」とはっきり言っています。
それが、バガヴァッド・ギーターの中でアルジュナが戦場で直面したことです。彼は物質的には裕福で成功者であったにも関わらず、人生の危機に直面した時、霊的に崩壊してしまいました。
それゆえ聖典は、物質的な成功は非常に重要だが、同様に霊的な成功も非常に重要であると言っています。霊的な成功によって、物質的成功とのバランスを取る必要があるのです。究極的には霊的成功が一番重要になってくるのです。ブルハダーランニャカ・ウパニシャッドは、真の成功者とは、自分の霊的な本質を発見した者である、と言っています。
では今回は、社会全体のために作られた、社会の組織体系から学んでいきます。
社会の4つのグループ/ヴァルナ
聖典によると、社会の人類全てはざっくり4つのグループに分類されています。それぞれのグループは、「ヴァルナ」と呼ばれています。
そして、それぞれのグループは、社会の「器官」として機能します。もし社会が「一つの体」だとしたら、それぞれの部署/グループは、その体の器官として働くのです。この社会はまるで、「4つの器官」を持っている有機的な体のようだ、と聖典は言います。
では、社会が分割された、4つのグループとは何でしょう?
1. ブラーフマナ ※聖職者
2. クシャットリヤ ※行政
3. ヴァイッシャ ※商人
4. シュードラ ※労働者
これらはよく知られている、4つのヴァルナ/グループです。
※一般的によく認知されているイメージ
では、この分割は何を基準にしてなされたのでしょう?「私はどのグループに属するのか?」ということを明確にするためにも、何を基準にしてなされた分割なのかを知る必要があります。
この社会の分割には、人格、仕事、生まれによる「3つの分割の基準」があります。そして、自分がどこに属するのかは、この分割の基準に基づいて変わってきます。
【社会を分割する3つの基準】
1.「人格/グナ」に基づいた社会の分割
一つ目の基準は、人格・性格に基づいた社会の分割です。サンスクリット語では、グナ・ヴィバーガと言います。「グナ(性質)/人格」に基づいた社会の分割、という意味です。
同時に前途した、4つの人格のタイプ - ブラーフマナ、クシャットリヤ、ヴァイッシャ、シュードラ - についても考慮しなくてはいけません。人格のタイプに基づいて、人はグナ・ブラーフマナorクシャットリヤorヴァイッシャorシュードラ、という風に呼ばれるのです。
次に、このような疑問が沸きます。何が私をグナ・ブラーフマナにするのだろう?どんな個人の特性が、私をグナ・ブラーフマナ、クシャットリヤ…etc.にするのだろう?
聖典が言う、4つのタイプがあります。
1.スピリチュアルな人格/グナ・ブラーフマナ
最初に来るのが、霊的・スピリチュアルな人格です。霊的・スピリチュアルなことに最も引き付けられる人格で、スピリチュアルな探求が大好き、社会から退くこと、孤独、沈黙、瞑想が大好きで、究極の真理を探求するのが大好きな、それしか考えられない人格です。
他の人たちがもの凄く重要と考えることでも、この人格の持ち主にとってそれらは取るに足りない、むしろ馬鹿げたことにさえ見えます。このような人のことを、「グナ・ブラーフマナ」と言います。サンニャーサ/放棄(出家)はそのような精神の持ち主にとっては、魅力的に映るのです。
他の人たちにとって、孤独とは独りぼっちで惨めで寂しい、陰鬱、孤独、などと映ります。しかしこの人格の心は、孤独が大好きです。これをスピリチュアルな人格と呼ぶことにしましょう。そしてこのグナ・ブラーフマナな人格は、サットヴァ(純質)な人格と呼ばれています。
2.エネルギッシュに奉仕する人格/グナ・クシャットリヤ
そして二番目の人格は、活力に満ちた/ダイナミックな人格です。活動することを大いに好みます。ちょうど前の人格と正反対です。社交的、活動的、計画的、エネルギッシュ、ダイナミック、モチベーションの高い心を持つ人格です。そしてこのモチベーションは、「無私の」モチベーションです。活動には興味があるが、それは自己中心的な活動のためではなく、道徳の向上や社会を助けることなど、貢献や奉仕することに興味を持っています。
そのような、無私のモチベーションを持った精神を、「グナ・クシャットリヤ」の精神といいます。社会の物質的な発展のために、大いに貢献する人格です。訳すなら、無私のモチベーションを持った精神、というシンプルな言葉を使いましょう。
3.活動的で自己中心的な人格/グナ・ヴァイッシャ
次に、三番目の人格です。これも同様に、活力に満ちた/ダイナミックな人格です。前の人格も、この人格も、孤独や引きこもりなど考えられません。サンニャーサ(出家)など絶対に考えられません。むしろ彼らは、出家者に対して怒りを表したりします。この3番目の人格も非常に活力に満ちており、モチベーションの高い人格ではありますが、一瞬たりとも静かに座っていることができません。沈黙や孤独、放棄、瞑想のことなど、考えることすらできません。
しかし、この人格はエネルギッシュですが、タイプ2の人格とは異なっています。何が違うのでしょう?この人格は、非常に自己中心的だということです。ですのでこれを、自己中心的なモチベーションの人格と呼ぶことにします。
この人格は、自分と自分の家族のため“だけ”に、利益を生み出す活動しかしません。自分たちのために貯蓄はするけど、社会への貢献など一切考えません。そして非常に活動的なのです。この精神は、「グナ・ヴァイッシャ」の精神です。訳すなら、自己中心的なモチベーションで活力に満ちた精神、としましょう。
4.受け身で無気力な人格/グナ・シュードラ
そして四番目に来るのが、「グナ・シュードラ」です。受け身で、無気力で、全くモチベーションのない人格です。人生において全くモチベーションがないと、多くの人たちが不平を言っています。物質的な成功またはスピリチュアルな成功、どちらにも関心がありません。ダルマ、アルタ、カーマ、モークシャのいずれのプルシャアルタ(人生の目的)にも、まったく惹きつけられないのです。彼らにとっての人生の目的とは何でしょう?ただ食べること、生き延びること、そして死ぬことです。動物の心に非常に近いと言えるでしょう。
これらが4つの「人格に基づいた分割」です。
そして、自分がどこに属するのかは、自分で決めなくてはなりません。公に宣言する必要はありません。ただ、自分の立ち位置は把握しておくべきです。
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