このシリーズは、「ヨガ哲学きほん講座(ビデオ講座)」で受講していただけます!
※講座の紹介動画はこちら
【第1話 4つの人生の目的】
- 知性を使わない人間は動物と変わらない
- 安全・快楽・目に見えない幸運、3つの目的
- 人類の最終目的地は、「悟り・解脱」
1.アルタ/安全、安心
人生のとても早い時期に始まる、「アルタ/安心、安全」のための目標です。安心、安全のために獲得するすべてのものは、アルタのカテゴリーに入ります。
※ここでのアルタは、プルシャアルタのアルタとは異なる。
ここでの安全とは、純粋に肉体が生き残ることを意味します。生まれるやいなや、人間を含む全ての生き物が本能的に持っている、本質的な衝動があります。何とかして生き延びようとする衝動です。
そして、肉体が生存するため、どんなものであっても、安全のために手に入れる全てのものは、アルタに分類されます。そしてそれらは、不安な感覚を取り除くのに役立ちます。
安全のためのそれらは、どんなものでしょうか?
ざっくり言うと、食物、衣服、住居、健康です。
食物については、生まれてすぐに闘いは始まります。なぜなら食物がなくては、餓死してしまうからです。
次に衣服、体を覆い隠すものです。環境から身を守らなくてはなりません。冬服、夏服、など、実にたくさんの種類の衣服があります。体を覆い隠すものは何も衣服だけに限りません。ヘルメットも安全のためですし、シートベルトも安全のため、マスクもあります。これら全ては何のためでしょう?安全のためです。
そして住居です。死ぬまでの一つのプロジェクト、これは何でしょう?自分の家を持つことです。少なくともマンションくらいは。少なくともこのエリアには、いや、このエリアでなくては…という具合にです。
そして健康。言うまでもなく体が健康であることは非常に大事です。私たちは生涯を通して、あらゆる病気やケガと闘わなくてはなりません。
これら、安全、衣服、住居、健康のためのものは何であれ、人生というサバイバルから身を守るためのものです。
最初の段階では、自分の現在の安全を守ろうとしますが、やがて次の段階の問題がやって来ます。将来の安全についてです。なぜなら、歳を取ると働けなくなるし、お金を稼げなくなります。子供たちは本当に、自分たちの老後の面倒を見てくれるのだろうか…?
人生の前半のころは、食物と衣服が重要でしたが、人生の後半の方では、健康が重要になってきます。起こりうる問題を想像し、予期せぬ事故や脅威に怯え始めます。保険は全種類入った方がいいのだろうか?など…
このように、現在の安全と、将来の安全とがあるのです。
そして更に、次の段階にやって来る課題があります。一度、安全のためにいくつかの物や人を所有したなら、今度はそれらの安全の確保をしなくてはいけません。
自分の身を守るために衣服を所有したとします。今度は、その衣服を毎日きれいに保つために、洗濯機を購入なくてはいけません。そして洗濯機を買いますが、洗濯機が故障する可能性があります。そして洗濯機の安全のために、保障サービスに加入します。それゆえに、安全には、安全のための安全、そして安全の安全のための安全が必要になります。
住居、家はあなたに安全を与えてくれます。しかしやがて、あなたは家の安全を心配し始めます。そしてあなたはセキュリティーシステムを導入します。家の安全(セキュリティー)のための、セキュリティーです!
これを人生と呼びます。特に深く考えることもなく、私たちが日常的にやっていることです。
このように私たちは、おそらく人生の大半は、安全の確保のために忙しくしています。洗濯機やセキュリティーシステムなど、何であれこれら全てのものは、「アルタ プルシャアルタ」のカテゴリーに分類されます。私たちは、恐れから自由になりたいのです。
動物たちも安全を欲しがります。しかし彼らは、本能的に安全を確保するようにできています。神が動物たちに本能を与えているのです。例えば、彼らには特別な皮膚、毛皮が与えられています。なので、彼らにはデザインされた服など必要ありません。神―バガヴァーンが彼らに、生まれながらの安全を与えているからです。
しかし私たち人間は、自分で安全を確保せねばなりません。
2.カーマ/娯楽、快適さ
一度安全が確保されたなら、もう私が生き延びるための脅威はそこにありません。今日食べるためだけでなく、孫の代までもの貯金も蓄えました。そして、まずまずの自宅も購入しました。あなたは必要なもの全てを手に入れました。では次に、人生で何ができるでしょうか…?
次に向かっていくのは、「カーマ(快適さ、心地よさ)プルシャアルタ」です。安全を確保するためではなく、あなたが楽しめること、特になくても大丈夫なのですが、あるとよりベターなものです。ラグジュアリーで心地良い、娯楽、エンターテイメントのことです。
私が生き延びるために、エンターテイメントは必要ありません。ですので、このカーマはアルタには属しません。全ての楽しみごとは、「カーマ・プルシャアルタ」に分類されます。お祭り騒ぎのような、楽しい時を過ごしたい、もっと自分をエンジョイしたい!という訳です。
ですので、全ての音楽、ダンス、演劇、テレビ、映画などもこれに属します。言うまでもなく、現代のエンターテイメント産業はとてつもなく大きなものになっています。
そしてひとたび、自分の周りにエンターテイメントの環境を整えたなら、ほどなくして、それに飽きてしまいます。同じ映画ももう見飽きたし… それよりもっと、色んなところに行ってみたいな。そうだ、海外旅行に行こう!あれも見たいし、これもやってみたいし…これら全ては、カーマ・プルシャアルタの分類に入ります。快適さ、楽しみごと、娯楽、などです。
では、動物はどうでしょう?動物も快適さを求めます。しかし彼らは、本能的に快適さを求めます。もし太陽が照り付けていたら、彼らは自然と日陰に向かいます。これは、本能的に快適さを求めているに過ぎません。
しかし人間の場合は、知性が発達しているゆえ、自ら計画して自分を楽しませようとします。ですので人間の場合は、カーマ・プルシャアルタに属するという訳です。これが、人間が持つ、2番目の目標です。
今日、たくさんの国や人々の中には、アルタ・プルシャアルタ(安全)を得るためだけに、人生の全ての時間を費やしてしまうこともあります。彼らはカーマ(楽しみ)に進むことすらできないのです。毎日の水を確保するだけでも大変です。これはアルタです。カーマではありません。今日では、水でさえラグジュアリーになってきています。しかし彼らにとっては、水を得るのはとても困難なことなのです。ですので、アルタの次に、徐々にカーマが来るという訳です。
3.ダルマ(プンニャ)/目に見えない形の富、グッドラック
3つ目の人間の目標は、「ダルマ・プルシャアルタ」です。目に見えない形の富、幸運と定義されています。目に見えない形の富とは、グッドラック、幸運、運勢がよい、などと一般的に訳されています。あの人は本当に運がいいわね。あの人は強い運勢を持っているね。私は本当にラッキーだった!などのシチュエーションが当てはまります。
運や運勢という言葉を使うとき、あなたは何もそれを、目で見て確かめているわけではありません。しかしそれは、確かにあなたの幸せに役立っているように見えます。アルタ/安全に役立つものであろうが、カーマ/娯楽に役立つものであろうが、その運と呼ばれるものは確かに、あなたの幸せに役立つ「目に見えない形の富」に見えます。
そしてこのダルマ/目に見えない富(プンニャ/徳の貯蓄)は、適切な手段により、得ることができます。しかし今は、これについて話すのは控えておきます。手段について今は話しませんが、適切な方法を使えば得られるものなのです。
※適切な方法=サカーマカルマ/物質的繁栄を目的とした私欲のための宗教儀式など
このダルマが、適切な手段によって成し遂げられるものだとすると、ダルマもまた、人間の目標となるのです。
そしてこのダルマは、2つの方法で私たちの幸せに役立ちます。
一つ目は、ダルマは、私たちにアルタとカーマを与えることにより、「今生の人生の幸せ」に役立ちます。今の生活に幸せを与えてくれるのです。それに加えて努力するなら、更なる幸せに貢献できます。
二つ目は、「来世の人生の幸せ」にも役立つということです。特に、人生の最初の段階に効果を発揮します。人生の最初の数年間は、絶対に自分でコントロールできません。私たちの人生の最初の数年間は、誰かに相談をしたからそうなったのではなく、勝手に起こってしまっていることです。
例えば、どんな両親の元に生まれるか?という問題があります。もし違う両親だったら、もっと幸せになっていたんじゃないか?などと考えるかもしれません。しかし、そんな選択はできませんでした。生まれたらこの両親だったのです。または、片親だったり、孤児だったりする場合もあります。どんな家柄なのか、どんな環境で、どのように育てられるのか?溺愛されて育つのか、虐待されて育つのか?子供には何の選択肢もありません。
なので、たとえ人間に生まれたとしても、人生の最初の段階は、自分の手の内にはないのです。では、誰の手の内にあるのでしょう?それは、ダルマ/プンニャによって決められます。今、自分が得たダルマは、今生の助けになるだけでなく、来世の最初の数年間の助けにもなるのです。例えば、良い両親の元に生まれたり、良い環境、美味しい食べ物、素敵な衣服、立派な住まい、価値の高いもの、全てです。来世の全ての良いことは、このダルマによってもたらされます。
子供の頃の人生だけではありません。人生の最初の数年間は、将来大人になった時の人生さえも決めるので、とても重要です。心理学者たちによると、現在の私たちの感情コンディションは、子供の頃に大きく決められてしまっているということです。幼少期というのは、大人になってからの、肉体的な健康、感情的な健康、知的な健康状態でさえ、大きく左右してしまいます。
そして幼少期というのは、自分自身ではどうすることもできません。両親にどのように育てられるかなどは、自分で決めることはできません。ですので、もし来世で自分の幼少期をコントロールしたいなら、それはダルマ・プルシャアルタを通して可能になります。
今生で得るダルマは、来世の幼少期の人生に直接影響します。そして将来、大人になってからの人生にも間接的に影響します。
そして適切な手段でダルマを増やす方法があります。「彼はたくさんのプンニャを稼いだ」という言い方があります。お金などの「目に見える冨」を稼ぐことを言っているのではありません。「目に見えない富」のことを言っているのです。
ダルマ、アルタ、カーマ、これら3つの目標には沢山の共通点があることから、一つにまとめてプレーヤと呼ばれています。プレーヤは、ダルマ+アルタ+カーマを合わせた意味を持つ、一つの言葉です。
それでは、4つ目のプルシャアルタ、最後に来る人生の目標とは、一体何でしょうか?
※ブログやSNSなどへの転載は可能ですが、必ず引用元として当サイトへのリンクをお願いいたします。尚、商用サイトへの転載はご遠慮いただくようお願いいたします。