【第6話 瞑想のヨガ】3.マーナサ/メンタル調整プログラム

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【第6話 瞑想のヨガ】

2.マーナサ/メンタル調整プログラム

【人格の3つの“層“】

3.マーナサ/メンタル的なこと
そして3番目の層は、「マーナサ/メンタル・精神的・心理的なこと」です。これを、「 メンタル調整プログラム」と呼ぶことにしましょう。全ての種類の“メディテーション/瞑想”は、この“メンタル調整プログラム”に属します。

“メンタルを調整する方法”は、何も瞑想だけではありません。他にも方法はあります。しかし、“瞑想”というのは、「メンタルをプログラミングし、調整する手段」に他なりません。実際、ウパーサナという言葉の主要な意味は、“メンタルを調整するための瞑想“なのです。

しかしまず最初に、“身体と話すことの調整”をしない限り、マインドをうまく扱うことはできません。“身体と話すことの調整”は、“マインド調整への足掛かり”となっているのです。

なぜなら、マインドは微細な道具”なので、マインドに直接働きかけるのは容易ではありません。だから、“身体と言葉の訓練”から初めて、その次に“マインドの訓練”をするのです。

ですので、“身体と話すことの調整”は、後のマインド調整のための、“間接的な方法”と言えるでしょう。それが、どんな瞑想プログラムであれ、身体と言葉の“両方”の訓練が含まれている理由です。だからパタンジャリヨーガ・スートラアシュターンガ・ヨーガでは、目的は“メンタルの調整”であるにも関わらず、“身体と言葉の訓練”についても語られているのです。

有名なバガヴァッド・ギーター6章のタイトルは、“メディテーション/瞑想”であるのに、クリシュナは、アーハーラ・ニヤマ/食べることの訓練について話しています。瞑想についてなのに、なぜ食べ物について話す必要があるのでしょう?それは、“心の調整”には、“身体の調整”が必要だからです。なぜなら、“身体と心”は繋がっていますし、“話すことと心”も繋がっているからです。

あなたがとても感情的になって怒っている時に、ゆっくり柔らかく話すことができますか?例外なく、あなたの口調は早くなり、刺々しくなってしまいます。このことは、“心の状態”と“話し口調”は繋がっている、ということを示しています。
そして“心身症”と言われる、精神的なことに起因する身体の疾患は、“心の状態”と“身体”は繋がっている、ということを示しています。

だから、「“身体と言葉”へ働きかけることで、“心”を扱う」のです。

ですので、“ウパーサナ”の主要な意味は「心の訓練」、二番目の意味は「身体と言葉の訓練」ということになります。

ではここで、いくつかの瞑想方法を紹介したいと思います。便宜上、瞑想の形式を「4つのタイプ」に分けることにします。全ての瞑想の形式は、“扱いたい心の側面、マインドに教え込みたい訓練の種類“に基づき、4つに分類することができます。ですので、自分の目的に沿った瞑想を強化することができます。
では、その4つの瞑想の形式とは何でしょうか?

【4つの瞑想 - 目的別 - 】

1. リラックス瞑想・・・心身をリラックスさせ落ち着きを身に付ける
2. フォーカス・集中力アップ瞑想・・・注意力を発達させ持続させる
3. 心を拡大し、“全体性”を思い描く瞑想・・・自分に対する間違った見方を修正する
4. 内面を“変換”させ、“価値”を見出す瞑想・・・思考パターンを変えて未来を変える

1.リラックス瞑想

何であれ、“心をリラックスさせる“ことを目的とした瞑想です。とりわけ、身体の各パーツをリラックスすることを目的としたものが、一般的に多く見られます。

身体から退き→話すことから退き→感覚からも退き
これら全てのレベルでリラックスし、最終的にマインドをリラックスさせるに至るのです。

今日、これは非常に重要になってきました。かつての、昔の人たちの生活は、もっとのんびりしていたので、人々はリラックスするために瞑想なんて必要としていませんでした。

しかし現代では、生活はどんどんスピードが速くなり、グローバライゼーションが進み、世界中と関わらなくてはなりません。生活のペースは早くなり、“ストレス”と言うキーワードは、現代社会において非常に重要になってきました。ですので、リラックス瞑想は、“ストレス解消瞑想”とも呼ぶこともできます。

リラックスするために、毎日数分座る練習をしましょう。これには、身体的な健康と精神的な健康、両方が求められます。どんなテクニックや手段を使おうが、それは問題ではありません。今日、様々なテクニックが開発され、たくさんの人たちがそれを紹介しています。なぜならストレスは、非常に深刻な問題になってきているからです。

ある人はマントラを勧めるかもしれませんし、ある人は何か別のテクニックを教えるかもしれませんし、またある人は呼吸に意識を払うように言うかもしれません。どんなテクニックでもいいのです。 または“シャーンティ”という言葉を繰り返すだけでも構いません。シャーンティ(平和・平穏)という言葉の意味を考えてみてください。その言葉自体が、リラクゼーションの形なのです。

これは、“何かをする“ということではありません。”何もしない“ということをするのです。では“何もしないこと”の、何が凄いのでしょう?なぜなら、私たちは常に何らかの悪さをしています。足をガタガタさせたり、爪をかじったり、鉛筆をかじったりなどの、落ち着きのなさです。この“落ち着きのなさ”は、絶対に克服せねばなりません!

2.フォーカス・集中力アップ瞑想

そして次のメディテーションは、「フォーカス・集中力アップ瞑想」です。マインドの“注意力を発達”させ、“持続”させるためのトレーニングです。それが物質的な分野であれ、霊的な分野であれ、あらゆる分野の中で、一定の時間フォーカスする能力を向上させるための瞑想です。

何であれ集中力は必要です。スポーツをするにも集中力は必要です。チェスだって、勉強だって、究極的にはこのクラスを聞くのにだって、フォーカスする能力は必要です。この能力がないと、クラス中に心の中で、別世界にさ迷い出てしまうことだってあるのです!だから集中するための瞑想が必要なのです。

では、その具体的な瞑想方法とは何でしょう?聖典はこれら3つのうち、いずれかをするよう命じています。もちろん、全てやっても構いませんし、自分がやりやすいものを選んでも構いません。

1.マーナサ・プージャー・・・心の中で「神への礼拝の儀式」をする
2.マーナサ・パーラーヤナ・・・心の中で「チャンティング(詠唱)」をする
3.マーナサ・ジャパ・・・心の中で「一つの神の名を繰り返し唱える」

2.パーラーヤナと3.ジャパの違いは、パーラーヤナとは、どんな祈りでも“チャンティング(詠唱)”をすることで、ジャパとは、“一つの神の名前(オーム ナマッ シヴァーヤなど)”を選んで、繰り返し唱えることです。全ての方式は素晴らしいので、どんな人でも自分の好きなものを、集中力を向上させるために、毎日練習することができます。

3.心を拡大させ“全体性”を思う瞑想

3つ目の瞑想法は、「心を拡大させる瞑想」です。これは、宇宙の創造物の”全体性”について心に想い描くために、心を拡大し、ふくらませる練習をすることです。

私たちは通常、“自分”と“全体”とを比べるという、相対的な考え方しかできていません。
例えば、自分は世界一偉大な人間で、自分が死んだら世界も終わるとか、自分の問題は世界一最悪な問題だ、などの考え方です。これらは世界に対する正しい見方でしょうか?

このように私たちは、“自分の人生”と、“自分の置かれる立場”について、間違った見方をしています。そして間違った見方からは、間違った反応しか返ってきません。自分を“全体性からの視点”から見た時のみ、“自分の置かれた立場”を正しく理解できるのです。

この瞑想は、宇宙の創造物に対する瞑想です。
想像してみてください。宇宙の銀河、星や空を・・・太陽系があって、地球があって、があって、があって、があって、があって、植物があって、動物がいて、がいて・・・そして人間です。これら全ての創造物の中で、たった50~60kgくらいの、いつか朽ち果ててしまう物体が、人間の肉体なのです・・・

この“全体性からの視点“で行う瞑想のことを、”ヴィシュワ・ルーパ・デャーナン“と言います。「創造物全てを、“宇宙の姿をした神”として見る瞑想」という意味です。

このように“全体性を心に想い描く”ことから、この瞑想について、“心を拡大させる瞑想”と呼ぶのです。

4.内面を“変換“させ、“価値”を見出す瞑想

4つ目の非常に重要な瞑想法は、「“思考パターン”を変え、内面を“変換”させる瞑想」です。自分の“思考パターンを変える”ことにより、完全な“内なる変容”をもたらし、人生に“価値”を見出す、という瞑想法です。私たちは通常、自分の思考パターンを無視しがちです。なぜなら“思考”は、あまりに“微かではかない、他の人からは見えないものだからです。だから常に隠しておくこともできます。

しかし、このことを覚えておかねばなりません。私たちの「思考パターン」が、私たちの「人生・運命」を決定付けてしまう、ということです。

誰かが、こんなことを上手く言っていました。

“思考”に気を付けなさい!それがあなたの”言葉”となります。
”言葉”に気を付けなさい!それがあなたの”行動”となります。
”行動”に気を付けなさい!それがあなたの”習慣”となります。
”習慣”に気を付けなさい!それがあなたの”人格”となります。
”人格”に気を付けなさい!それがあなたの”運命”となります・・・

このように「思考」は、あなたの“未来“を決定付けてしまう、最も微かな”ビージャ/種“なのです。あなたが“考える”ように、あなたは“なる”のです・・・

聖典はこのように警告しています。
あなたの“思考パターン”を、「見張っていること、気付いていること」を、決して忘れてはならない。それはあなたの“未来”になるからだ。
それゆえ、思考パターンの“内なる変容”が必要なのです。

バガヴァッド・ギーター16章では、私たちを「霊的な目的から引き離してしまう思考パターン」のことが、アースリー・サンパット(悪魔の/ネガティブな思考パターン)として呼ばれています。“霊的な目的から引き離してしまう思考パターン”とは何でしょう?嫉妬、意気消沈、忍耐のなさ、イライラ・・・などです。これらは究極的には何でしょうか?「思考」以外の何ものでもありません!

「思考」とは、建物の形を決める“レンガ”のようなものです。もし、建物の形を変えたいのなら、“レンガの配置”を変えなくてはなりません。歌の旋律を変えたい場合は、キーを変えなくてはなりません。

もしあなたが、“自分の人生を変換”させたいなら、あなたの“思考パターンを変換”させなくてはならないのです。なので、思考を変え、自分のことを「変換された人間」だと心に描くのです。

「私は忍耐強く、自分の人生に向き合う自信がある」
これが“思考パターン”です。
もし、「私は自信がない」という思考を繰り返すなら、あなたはそうなります。
もし、「私は自信がある」という思考を繰り返すなら、自信はやって来るのです。

身体の疾患でさえ、健康を“望むだけ”で治癒される、と言われています。

“マインド”は、凄まじいサンカルパ・シャクティ/決意の力を持つ、“パワフルな道具”です。
この「思考パターンを変え、内面を変換させる瞑想」は、私たちの“決意の力”を、最大限に活用し、役立たせるのです。

【瞑想例】
・自信、忍耐、哀れみなど、価値のある事柄を取り上げ、それらが人生の中で、平和と発展をもたらすのに、どれだけ重要であるかを心の中で見つめます。そしてそれを楽しんでいる状況を思い浮かべ、価値を見出します。
・正反対の特性、自信のなさ、イライラ、怠慢などを取り上げ、それがどれだけあなたと周りの人たちの平和を乱すかを考えます。
・自分自身が特定の価値を与える者だと見なし、その考えに瞑想します。

これら4つの瞑想が、マインドを調整し健康にして、“4つの人生の目的を達成するに相応しい状態”にするのです。

身体・言葉・心の「チームワーク」

身体・言葉・心、それぞれが個々に健康であればそれでいい、というわけではありません。最も重要なのは、それらが“統合と協調”、つまり「チームワーク」の中で機能しなくてはならない、ということです。

スポーツの世界でもそうですよね?チームの個々の選手は素晴らしくても、もし協調連携などの“チームワーク”がなければ、チームは負けてしまいます。

ですので、チームワークは必要不可欠です。なぜなら私たちの人生は、「身体・言葉・心によるチームワーク」で成り立っているのですから!それらが食い違って機能することは、ないでしょう?

例えば、あなたが誰かに嘘をつくならば、“言葉“と“心“の間に分裂を作ることによって、チームワークを妨害している、ということになります。

また、あなたが時間を決める時、“心”が決めます。そして7時に時間を決めたとします。しかし7時半になっても、まだ行こうかどうか迷っている場合はどうでしょう?“心“と”身体“のチームワークが機能している、とは言えませんよね?

このように、身体・言葉・心、それぞれの健康と統合、チームワークは、注意して正しく扱われるべきなのです。

これらの方法は、ウパーサナ・ヨーガ、またはサマーディ・ヨーガ、またはアシュターンガ・ヨーガとして、聖典によって規定されているものです。

そしてもちろん、カルマ・ヨーガウパーサナ・ヨーガの間に、どちらが先だとかの順番はありません。ある段階でどちらかに、よりフォーカスすることはあるかもしれませんが、順番があるというわけではありません。両方とも同じくらい重要です。

そしてひとたび、カルマ・ヨーガとウパーサナ・ヨーガの訓練を経たならば、三番目に来る最も重要な訓練のコース、「ニャーナ・ヨーガ/知識のヨーガ」へ進む“準備ができた“、ということになります。

ニャーナ・ヨーガは、次回のクラスで学びます。
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